ボストン側メンバーの遠藤謙です。
現在、マサチューセッツ工科大学のメディアラボで義肢装具技術の研究をしている博士課程の学生です。留学前はヒューマノイドロボットの研究を行っていましたが、親友が骨肉腫になったときの衝撃から、科学技術に携わる人間として何ができるかと考えるようになり、留学するに至りました。
(こちらにボストン日本人研究者交流会の記事があります。発表資料はこちら)
所属するメディアラボのバイオメカニクスグループでは、人間の歩行を解剖学・生理学・バイオメカニクスの視点から解析し、得られた知見から下腿義足の開発を行っております。研究室では、モータやセンサなど高価なものが簡単に購入でき、高価な義足が次々と組み上がりますが、一方でこの義足が何人の手にわたるのかという疑問を常に持ちながらいました。
ある日のこと、同じラボに所属するインド系アメリカ人のGreddyが一年間、インドのJaipur Footのクリニックにインターンに行くことになりました。現地から送られてくる彼のメールには、毎日100人以上もの人がクリニックに訪れ、10ドル程度の廉価な義足を持ち帰るという現実が記述されていました。MITで行われている研究と現場の状況の確執に驚愕しました。そして、彼らが抱える問題点には、私たちで簡単に解決できるものが多くあり、それからは現在の研究成果をどうやったら全世界の人々へ還元できるのかと考えるようになりました。インドから帰ってきたGreddyも同じ思いを持っていたのか、共にD-labへ足を踏み入れることになりました。その年にD-labの一部としてDeveloping World Proshtetics(DWP)という授業の中で、学部生と共に途上国向けの義肢装具の技術開発を始めました。
D-lab DWPは今年3年目を迎え、現在私は授業のインストラクターを勤めています。私自身もインドのクリニックでのインターンも経験し、この活動の意義を再確認しました。この活動には、研究室のアドバイザーProf. Hugh Herrを始め、私と同じ研究室に所属するの義足のスペシャリストたちがクラスを受講している学生といっしょに義肢装具の技術開発を行っています。研究室の中での研究活動と、途上国向けの開発活動を両立できる環境が整いつつあるのを感じてます。さらに、このような活動をする上で、技術を現地に定着させる手段の一つとして、義肢装具技術を用いたビジネスサイクルを生み出す必要性があるということも学びました。
今年留学5年目を迎えておりますが、「本当に必要とされている技術を生み出したい」という留学当初からの思いは変わっておりません。ただこのような研究活動をするためには、いまの社会のシステムがあまり適していないように思えます。このD-labは研究者としての私の挑戦でもあります。今後のD-lab Japanの活動の中で、単にD-labの理念を日本の大学に伝えるだけでなく、研究者が社会貢献に乗り出すための環境づくりへの一石も投じたいと考えております。長くなりましたが、これが私がD-labに関わるようになった経緯です。今後D-lab Japanの活動の他にも、MITのD-labのニュースやDWPの授業の経過や活動など幅広いコンテンツをブログにアップできればと思っております。今後ともよろしくお願い致します。
Sunday, February 7, 2010
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