Sunday, April 18, 2010

サイト変更のお知らせ

サイトを管理している東工大/MITの鹿野です。

この度、サイトを新しくリニューアルすることになりました。
どうぞ新しいサイトもよろしくお願い致します。

http://utbjp.blogspot.com/

Thursday, April 8, 2010

Paul Polak、訪MIT

MIT遠藤です。

今週の月曜日、Paul PolakがMITのD-labの見学とDesignのクラスでの講義のためのMITに訪れました。Paulは1981年にInternational Development Enterprise(IDE)という非常に有名なNPOを立ち上げ、水の感慨システムやポンプのような農業に必要な適正技術を使って途上国を支援しています。現在IDEは世界有数の大きな団体に成長し、活動範囲をインドからアジア諸国、アフリカ、さらにラテンアメリカにまで広げています。Paulとはfacebookやメールで何度かやり取りしたことはありましたが、実際に会うのは今回が初めてでした。

彼の講義は、スライドを使ったプレゼンテーションではなく、ただ彼が学生の前に座り、質問を受けて、自身のさまざまなストーリーを織り交ぜつつ、その質問に答えるというスタイルでした。驚くべきことは、すべての学生が彼の著書「Out of Poverty」を読んでおり、その内容に質問が集中していたことです。その中でも印象的だった質問をいくつか紹介します。

Q. 「本の中では現地のコミュニティーと対話をしなければならないとあるが、はじめていくところにはどうやってコンタクトをとるのか?」
A. 「はじめていくとしても、まったく知らないコミュニティーというのはない。常にすでに知っているコミュニティーを訪ねるのだ。どうやって知るかというと、必ず知り合いが紹介してくれる。ここで大切なのは、ここアメリカでもネットワークを大切にすることなんだ。」
この質問は日本でもよくされたものですが、D-labにいると本当にいろいろな方が話を広げてくださるので、非常にネットワークの大切さを感じます。この下地がまだ日本にはないのでしょう。この我々のネットワークは日本で個々に活動されている方々をサポートできるものの一つかと思っております。

Q. 「国連や世界銀行や政府などが援助しているにも関わらず、同じような国で活動されるのはなぜか?もっと援助が必要な国があるのでは?」
A. 「我々は大きな機関の調査を信用していない。言い方が悪いもしれないが、調査とは大抵10%の人は切り捨てらるもの。我々がやろうとしているのは、自分たちの目でみて、そこに問題があれば、その解決法を一緒に考えること。お金を援助することは必ずしも解決法ではない。」

彼は話の中で"How much they can afford to pay for what?"という言葉を何度も繰り返しました。例えば、農業で必要な水のくみ上げポンプは初期投資は彼らにとって高価かもしれないけれども、農作業の効率が上がり、作物の売り上げもあがれば、彼らは購入する必要があるというのだ。その結果、彼らの生活水準が向上するのだと。Paulは、最終的には寄付や援助に頼らず、彼らを自立させ、一定の経済レベルにまで押し上げることを常に考えているのです。

Paulの話を聞いて、D-labの創設者であるAmy Smithが彼から非常に大きな影響を受けていることを感じました。とくに、実際に現地に行かないと適正技術は作れないと言い切るくらいにまで、現地の人々との対話を重要視するところは、ニーズを理解しそのソリューションを生み出すプロセスを重視する、まさにエンジニアの魂であると感じました。

この夏、Amy Smithが主催するInternational Development Design Summitという学生向けのイベントが7/7から30まで開催されます。毎年適正技術を学び、考えることを行ってきましたが、今年は普及方法に着目し、現在すでにある適正技術を現地に根付かせる方法を提案することを目標にしているようです。場所がコロラドというのも、Paul Polakが現在コロラドに在住しており、彼の参加を呼びかけたことから決まったようです。(このようなイベントに日本の学生も参加すべきであると思うのですが、時期が期末試験と重なる大学が多いことから、難しいとの反応を受けたことがあります。)

授業のあと、簡単に私の授業の紹介と義足を紹介させていただきました。今後普及のネットワークに協力していただけることになりました。我々がもともと義肢装具の研究者であることにもおどろいていただき、エンジニアがこのようなことに目を向けることが大事であるとおっしゃっていました。まさに私が目指すところです。