サイトを管理している東工大/MITの鹿野です。
この度、サイトを新しくリニューアルすることになりました。
どうぞ新しいサイトもよろしくお願い致します。
http://utbjp.blogspot.com/
Sunday, April 18, 2010
Thursday, April 8, 2010
Paul Polak、訪MIT
MIT遠藤です。
今週の月曜日、Paul PolakがMITのD-labの見学とDesignのクラスでの講義のためのMITに訪れました。Paulは1981年にInternational Development Enterprise(IDE)という非常に有名なNPOを立ち上げ、水の感慨システムやポンプのような農業に必要な適正技術を使って途上国を支援しています。現在IDEは世界有数の大きな団体に成長し、活動範囲をインドからアジア諸国、アフリカ、さらにラテンアメリカにまで広げています。Paulとはfacebookやメールで何度かやり取りしたことはありましたが、実際に会うのは今回が初めてでした。
彼の講義は、スライドを使ったプレゼンテーションではなく、ただ彼が学生の前に座り、質問を受けて、自身のさまざまなストーリーを織り交ぜつつ、その質問に答えるというスタイルでした。驚くべきことは、すべての学生が彼の著書「Out of Poverty」を読んでおり、その内容に質問が集中していたことです。その中でも印象的だった質問をいくつか紹介します。
Q. 「本の中では現地のコミュニティーと対話をしなければならないとあるが、はじめていくところにはどうやってコンタクトをとるのか?」
A. 「はじめていくとしても、まったく知らないコミュニティーというのはない。常にすでに知っているコミュニティーを訪ねるのだ。どうやって知るかというと、必ず知り合いが紹介してくれる。ここで大切なのは、ここアメリカでもネットワークを大切にすることなんだ。」
この質問は日本でもよくされたものですが、D-labにいると本当にいろいろな方が話を広げてくださるので、非常にネットワークの大切さを感じます。この下地がまだ日本にはないのでしょう。この我々のネットワークは日本で個々に活動されている方々をサポートできるものの一つかと思っております。
Q. 「国連や世界銀行や政府などが援助しているにも関わらず、同じような国で活動されるのはなぜか?もっと援助が必要な国があるのでは?」
A. 「我々は大きな機関の調査を信用していない。言い方が悪いもしれないが、調査とは大抵10%の人は切り捨てらるもの。我々がやろうとしているのは、自分たちの目でみて、そこに問題があれば、その解決法を一緒に考えること。お金を援助することは必ずしも解決法ではない。」
彼は話の中で"How much they can afford to pay for what?"という言葉を何度も繰り返しました。例えば、農業で必要な水のくみ上げポンプは初期投資は彼らにとって高価かもしれないけれども、農作業の効率が上がり、作物の売り上げもあがれば、彼らは購入する必要があるというのだ。その結果、彼らの生活水準が向上するのだと。Paulは、最終的には寄付や援助に頼らず、彼らを自立させ、一定の経済レベルにまで押し上げることを常に考えているのです。
Paulの話を聞いて、D-labの創設者であるAmy Smithが彼から非常に大きな影響を受けていることを感じました。とくに、実際に現地に行かないと適正技術は作れないと言い切るくらいにまで、現地の人々との対話を重要視するところは、ニーズを理解しそのソリューションを生み出すプロセスを重視する、まさにエンジニアの魂であると感じました。
この夏、Amy Smithが主催するInternational Development Design Summitという学生向けのイベントが7/7から30まで開催されます。毎年適正技術を学び、考えることを行ってきましたが、今年は普及方法に着目し、現在すでにある適正技術を現地に根付かせる方法を提案することを目標にしているようです。場所がコロラドというのも、Paul Polakが現在コロラドに在住しており、彼の参加を呼びかけたことから決まったようです。(このようなイベントに日本の学生も参加すべきであると思うのですが、時期が期末試験と重なる大学が多いことから、難しいとの反応を受けたことがあります。)
授業のあと、簡単に私の授業の紹介と義足を紹介させていただきました。今後普及のネットワークに協力していただけることになりました。我々がもともと義肢装具の研究者であることにもおどろいていただき、エンジニアがこのようなことに目を向けることが大事であるとおっしゃっていました。まさに私が目指すところです。
今週の月曜日、Paul PolakがMITのD-labの見学とDesignのクラスでの講義のためのMITに訪れました。Paulは1981年にInternational Development Enterprise(IDE)という非常に有名なNPOを立ち上げ、水の感慨システムやポンプのような農業に必要な適正技術を使って途上国を支援しています。現在IDEは世界有数の大きな団体に成長し、活動範囲をインドからアジア諸国、アフリカ、さらにラテンアメリカにまで広げています。Paulとはfacebookやメールで何度かやり取りしたことはありましたが、実際に会うのは今回が初めてでした。
彼の講義は、スライドを使ったプレゼンテーションではなく、ただ彼が学生の前に座り、質問を受けて、自身のさまざまなストーリーを織り交ぜつつ、その質問に答えるというスタイルでした。驚くべきことは、すべての学生が彼の著書「Out of Poverty」を読んでおり、その内容に質問が集中していたことです。その中でも印象的だった質問をいくつか紹介します。
Q. 「本の中では現地のコミュニティーと対話をしなければならないとあるが、はじめていくところにはどうやってコンタクトをとるのか?」
A. 「はじめていくとしても、まったく知らないコミュニティーというのはない。常にすでに知っているコミュニティーを訪ねるのだ。どうやって知るかというと、必ず知り合いが紹介してくれる。ここで大切なのは、ここアメリカでもネットワークを大切にすることなんだ。」
この質問は日本でもよくされたものですが、D-labにいると本当にいろいろな方が話を広げてくださるので、非常にネットワークの大切さを感じます。この下地がまだ日本にはないのでしょう。この我々のネットワークは日本で個々に活動されている方々をサポートできるものの一つかと思っております。
Q. 「国連や世界銀行や政府などが援助しているにも関わらず、同じような国で活動されるのはなぜか?もっと援助が必要な国があるのでは?」
A. 「我々は大きな機関の調査を信用していない。言い方が悪いもしれないが、調査とは大抵10%の人は切り捨てらるもの。我々がやろうとしているのは、自分たちの目でみて、そこに問題があれば、その解決法を一緒に考えること。お金を援助することは必ずしも解決法ではない。」
彼は話の中で"How much they can afford to pay for what?"という言葉を何度も繰り返しました。例えば、農業で必要な水のくみ上げポンプは初期投資は彼らにとって高価かもしれないけれども、農作業の効率が上がり、作物の売り上げもあがれば、彼らは購入する必要があるというのだ。その結果、彼らの生活水準が向上するのだと。Paulは、最終的には寄付や援助に頼らず、彼らを自立させ、一定の経済レベルにまで押し上げることを常に考えているのです。
Paulの話を聞いて、D-labの創設者であるAmy Smithが彼から非常に大きな影響を受けていることを感じました。とくに、実際に現地に行かないと適正技術は作れないと言い切るくらいにまで、現地の人々との対話を重要視するところは、ニーズを理解しそのソリューションを生み出すプロセスを重視する、まさにエンジニアの魂であると感じました。
この夏、Amy Smithが主催するInternational Development Design Summitという学生向けのイベントが7/7から30まで開催されます。毎年適正技術を学び、考えることを行ってきましたが、今年は普及方法に着目し、現在すでにある適正技術を現地に根付かせる方法を提案することを目標にしているようです。場所がコロラドというのも、Paul Polakが現在コロラドに在住しており、彼の参加を呼びかけたことから決まったようです。(このようなイベントに日本の学生も参加すべきであると思うのですが、時期が期末試験と重なる大学が多いことから、難しいとの反応を受けたことがあります。)
授業のあと、簡単に私の授業の紹介と義足を紹介させていただきました。今後普及のネットワークに協力していただけることになりました。我々がもともと義肢装具の研究者であることにもおどろいていただき、エンジニアがこのようなことに目を向けることが大事であるとおっしゃっていました。まさに私が目指すところです。
Monday, March 29, 2010
適正技術とは
遠藤です。
今回10日間日本に滞在しましたが、そのうち5回もイベントに招待していただき、たくさんの方々にお会いする機会がありました。D-labのような「技術開発」と「国際開発」の2つの異なる「開発」を組み合わせた試みは日本では新鮮に見えるようで、多くの方に興味を持っていただきました。その中で一番多かった質問のひとつが「適正技術とはなにか?」というものでした。おそらく様々な団体が少しずつ異なる定義をしているかと思いますが、ここではD-labで教えている適正技術について紹介したいと思っております。多くの情報がD-labの教科書として使われている"Mastering the machine revisited: Poverty, aid, and technology"から学んだものです。
適正技術(Appropriate Technology)はもともとは中間技術(Intermediate Technology)という名前で、Ernst Friedrich Schumacherによって提唱されました。彼は名前から予想できるようにドイツ生まれですが、後々イギリスにて有名なEconomic Plannerとして活躍しました。戦後の復興活動の中で、高度な近代技術を用いた暴力的な援助が成功しないことから、ハイエンドでもローエンドでもない中間に存在する技術が、多くの雇用を生み出すということを述べ、中間技術の重要性を述べています。さらにSchumacherは仲間とともに非営利団体Intermediate Technology Development Group(ITDG)を立ち上げ、中間技術の普及に努めたのです。1960年代のことでした。のちにこれらのコンセプトは"Small is Beautifle"という書籍にて発表され、後の適正技術へ続いていきます。
その後、時代と共に戦後復興から途上国開発へと意味合いが変わり始め、中間技術という言葉が一般化されるようになりました。そして、中間技術という言葉は
そこで、Schumacherの死後、ITDGを引き継いだGeorge McRobieらは4つの特徴を引用しつつ、新しい適正技術という言葉を使うようになりました。適正技術とは
technologies designed to suit the needs of the community it is intended for, being culturally sensitive, environmentally responsible and spreading productive employment opportunities.
と紹介されております。
これらの定義の他にもさまざまな団体(OECD、GRET、ATIなど)が適正技術に関する議論をしておりますが、個人的には言葉の定義に関して、最低限の定義は必要とは思いますが、細かく定義しすぎるのは無意味と思っております。大抵の団体は同じような定義をしておりますし、言葉の意味よりも行動のほうが重要だと思っているからです。
なので、「適正技術とはなんですか?」と聞かれたら、D-labのwebsiteのように「現地のニーズ、文化、環境、人などを考慮したうえでの、最善の技術」と簡単に説明させていただいてます。
参考文献
Ian Smillie, "Mastering the machine revisited: Poverty, aid and technology", Practical Action Publishing, 2000
E. F. Schumacher, "Small is beautifle", 1973
"Putting Partnership into Practice", ITDG, 1989
今回10日間日本に滞在しましたが、そのうち5回もイベントに招待していただき、たくさんの方々にお会いする機会がありました。D-labのような「技術開発」と「国際開発」の2つの異なる「開発」を組み合わせた試みは日本では新鮮に見えるようで、多くの方に興味を持っていただきました。その中で一番多かった質問のひとつが「適正技術とはなにか?」というものでした。おそらく様々な団体が少しずつ異なる定義をしているかと思いますが、ここではD-labで教えている適正技術について紹介したいと思っております。多くの情報がD-labの教科書として使われている"Mastering the machine revisited: Poverty, aid, and technology"から学んだものです。
適正技術(Appropriate Technology)はもともとは中間技術(Intermediate Technology)という名前で、Ernst Friedrich Schumacherによって提唱されました。彼は名前から予想できるようにドイツ生まれですが、後々イギリスにて有名なEconomic Plannerとして活躍しました。戦後の復興活動の中で、高度な近代技術を用いた暴力的な援助が成功しないことから、ハイエンドでもローエンドでもない中間に存在する技術が、多くの雇用を生み出すということを述べ、中間技術の重要性を述べています。さらにSchumacherは仲間とともに非営利団体Intermediate Technology Development Group(ITDG)を立ち上げ、中間技術の普及に努めたのです。1960年代のことでした。のちにこれらのコンセプトは"Small is Beautifle"という書籍にて発表され、後の適正技術へ続いていきます。
その後、時代と共に戦後復興から途上国開発へと意味合いが変わり始め、中間技術という言葉が一般化されるようになりました。そして、中間技術という言葉は
- 小型
- 単純
- 安価
- 非暴力
そこで、Schumacherの死後、ITDGを引き継いだGeorge McRobieらは4つの特徴を引用しつつ、新しい適正技術という言葉を使うようになりました。適正技術とは
- コミュニティーの多くの人が必要としている
- 持続可能性を考慮した原材料、資本、労働力を用いる
- コミュニティーの中で所有、制御、稼働、持続が可能である
- 人々のスキルや威厳を向上させることができる
- 人々と環境に非暴力的である
- 社会的、経済的、環境的に持続可能である
technologies designed to suit the needs of the community it is intended for, being culturally sensitive, environmentally responsible and spreading productive employment opportunities.
と紹介されております。
これらの定義の他にもさまざまな団体(OECD、GRET、ATIなど)が適正技術に関する議論をしておりますが、個人的には言葉の定義に関して、最低限の定義は必要とは思いますが、細かく定義しすぎるのは無意味と思っております。大抵の団体は同じような定義をしておりますし、言葉の意味よりも行動のほうが重要だと思っているからです。
なので、「適正技術とはなんですか?」と聞かれたら、D-labのwebsiteのように「現地のニーズ、文化、環境、人などを考慮したうえでの、最善の技術」と簡単に説明させていただいてます。
参考文献
Ian Smillie, "Mastering the machine revisited: Poverty, aid and technology", Practical Action Publishing, 2000
E. F. Schumacher, "Small is beautifle", 1973
"Putting Partnership into Practice", ITDG, 1989
Tuesday, March 23, 2010
スタンフォード大学:Design for extreme affordabilityの授業紹介
こんにちは。この9月からスタンフォード大学のビジネススクールに入学予定の陸です。(ハーバードケネディスクールはビジネススクールとのJoint degree programを設けており、私はこの5月にケネディスクールでの一年目を終えて、9月から西海岸に移る予定です。)
以前、Kopernikのブログに、スタンフォードのDesign for Extreme Affordabilityという適正技術の授業見学の様子をレポートいたしました。
シンポジウム後の補足として、こちらのブログでも内容を紹介させてください。
---
(以下、Kopernikブログより引用)
教室の外では過去の受講生が作った パネルが展示されていました。いくつか紹介します:
②Multi-disciplinary / Collaborative dynamics
授業後にインストラクターに授業の一番のエッセンスを聞いたところ、最も強調し ていたのが「Multi-disciplinary」であることでした。異なるバックグラウンド、スキルセットを持った学生が集まる 中で初めてクリエイティブなアイディア、また包括的なビジネスデザインができるという言葉に大きく共感しました。
ま た、授業の大きな成功要因に、途上国にいるパートナーNGOの存在も挙げていました。パートナーを組んでいるNGOが、日頃の活動を 通して見えてきた現地のニーズや現在使っている製品の問題点などをあらかじめ的を絞って学生に伝えることにより、学生はすぐさまデザ イン思考のプロセスに入れるようです。プロジェクトの最終成果物も、まずはパートナーを組んでいるNGOを通じて現地での実用化の道を 考えるそうで、「現地からの情報吸い上げ」と「現地への製品提供」の双方向のコラボレーションがしっかりしていることが成功の秘訣と なっているようです。
③Practicality
もう一点、授業中繰り返しインストラクターが 強調していて、多少意外だったのが、「現実的であれ」というポイントです。
クリエイティビティという言葉から、ついつい「失 敗してもいいから好きに考えてごらん」という姿勢で臨むのかと思っていたのですが、インストラクターは授業中、繰り返し、「すでに世 の中に同じ製品があるなら、同じものは作るな。『買う』のがベストな解であることもある」「競合サーチを怠るな。100年前のアン ティークで実は必要な機能を満たしている製品をEbayで見つけて、それを改良したチームもある」「まずはパートナーを通じて製品を届けること を考えるように。ベンチャーを作ると、生産インフラから配達ネットワークまで一から作ることになって労力がかかる。」など と、「現実的に最も効率の良い解を考えるように」ということを強調していました。
デザイン思考のエッセンスの一つに「現実的で あること」があるそうですが、どこまでも、「どうやったらユーザーにとってのインパクトを最大化できるか」を中心に考えて いる姿勢の先に初めて成功するデザイン・ビジネスがあることを改めて実感しました。
もちろんこういった現実解を強調する一方 で、「リスクを自由に取れる環境」もばっちり用意されています。授業にはベンチャーキャピタル、弁護士、現地への旅行手配 などのサービスがしっかりついていて、実際にこれらのインフラを利用してベンチャー化したチームもいくつかあるようです。
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たっ た2時間の授業でしたが、途上国向けものづくりのエッセンスが詰まった、実り多い見学となりました。
以前、Kopernikのブログに、スタンフォードのDesign for Extreme Affordabilityという適正技術の授業見学の様子をレポートいたしました。
シンポジウム後の補足として、こちらのブログでも内容を紹介させてください。
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(以下、Kopernikブログより引用)
先週末、スタンフォードを訪問する機会があ り、そこでDesign for extreme affordability という途上国向け製品開発を教える授業 を見学してきました。今日は簡単にその授業の紹介をいたします。この授業は、IDEOの創設者である David Kelleyが率いるD.Schoolというデザインスクールが運営する 授業の一つで、デザイン、エンジニアリング、ビジネスなど異なる分野を専攻する学生が互いのスキルを持ち寄って、提携先の NGOが持ち込んだ途上国でのデザイン課題に取り組んでいます。
授業構成の詳細は、こちらに載っているので見ていただければと思い ますが、授業を見学して感じた特徴についていくつか書いてみようと思います。
①Design Thinking
D.school全体を貫くテーマ が、Design Thinkingという「人間(ユーザー)の生活全体を中心 に、総合的・クリエイティブに、現実的な解を考えよう、というコンセプトです。というと、訳がわからないように聞こえます が、例えばExtreme Affordabilityの授業では下記のようなパーツが織り込まれていました:
-Ethnography
記 述民族学などと訳されますが、マーケティングの手法の一つとしても注目されているもので、ユーザーの生活を文化人類学のように判断を はさむことなく丸ごと観察し、受け入れることで、ユーザーのニーズを理解・特定していくプロセスのことを指します。授業では、始 めは大学付近の消防士やウェイターなど自分とは全く違う生活をしている人を観察させる宿題を出すなどして、Ethnographyを 教えているとのことでした)
-Rapid Prototyping and iteration
製品デザインのプロトタイプを考 えるだけではなく、ビジネスモデル・プロモーションプランまで含めたトータルのビジネスデザインを短時間で考え、何 サイクルも回すことで改善を進めていくプロセスのことです。見学した授業ではちょうど、ベンチャーキャピタルに見せるビジネスプラン のプロトタイプをどう作るか、というエクササイズをやっていて、先生が「製品のポジショニングはこう考えるべし」という エッセンスを5分程度話したあと、5分ほど時間をとって、各チームがポストイットと模造紙を駆使して、アイディアをどんどん書いては 貼っていくというエクササイズを繰り返していました。(これまたマーケティングの世界でも使われる手法の一つで、前職で新ブランド立 ち上げの仕事にかかわっていた時にクライアント企業と行っていたエクササイズを思い出しました。)
D.school全体を貫くテーマ が、Design Thinkingという「人間(ユーザー)の生活全体を中心 に、
-Ethnography
記 述民族学などと訳されますが、
-Rapid Prototyping and iteration
製品デザインのプロトタイプを考 えるだけではなく、
教室の外では過去の受講生が作った パネルが展示されていました。
②Multi-disciplinary / Collaborative dynamics
授業後にインストラクターに授業の一番のエッセンスを聞いたとこ
ま た、授業の大きな成功要因に、
もう一点、授業中繰り返しインストラクターが 強調していて、
クリエイティビティという言葉から、ついつい「
デザイン思考のエッセンスの一つに「現実的で あること」
もちろんこういった現実解を強調する一方 で、「
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たっ た2時間の授業でしたが、
Sunday, March 21, 2010
シンポジウムを終えて~私たちにできる始めの一歩~
3月20日のシンポジウムにご参加くださった皆様、休日にもかかわらず、足をお運びくださり、ありがとうございました。
皆様のおかげでとても実り多い会となりました。終了後の懇親会で、他分野の方々が熱心に意見交換されていたのが大変印象的でした。
さて、シンポジウムを終えて、一つだけ言い足りなかったと後悔していることがあります。
「適正技術教育の輪を日本にも」という掛け声の下、皆さん一人一人へ行動をとるよう呼びかけましたが、果たして「私にもできる気がする」と思えるだけの自信のかけらを与えられたかどうか、と。
第1部の質疑応答で、東京工業大学の学生さんが素晴らしい質問をしてくださいました。
「東工大では、ICT ChannelというサークルでD-Labと同じような活動をしている。しかしながら、学生団体なので十分なリソースのサポートもないし、卒論にすることもできないので学生の時間も割きづらい。D-Labはどのように始まったのか。またどこから資金をもらっているのか。」というものでした。
質疑応答中は時間の都合上、十分にお答えをすることができませんでしたが、「D-Labの活動は良くわかった。では、私たちはどうすればいいのか」という心の叫びが聞こえるようで、シンポジウム終了後も、ボストンへの飛行機の中も、ずっとその質問がつきまとって頭を離れませんでした。
今日はこの場を借りて、私なりの回答を書いてみようと思います。
D-Labは以前のエントリーにもあるとおり、2003年にEdgerton CenterでInstructorをしていたAmy Smithが始めました。初めてコースが開講された頃、私はMITに学部生として在籍していましたが、卒業する2006年まで、D-Labについてはほとんど知りませんでした。 Amy Smithについては、Genius Grantを受賞した2004年に、学内新聞で名前を見かけていましたが、その時の印象も、「へえ、大学内には不思議なことをしている人もいるんだ。」という程度の認識でした。
Edgerton Centerは日本で言えば工学部に併設された工作室、東工大でいえば、「ものつくりセンター」のようなセンターです。そのセンターのインストラクターといえば、いわば「工作室のおっちゃん」(いえ、Amyはおっちゃんではなかったわけですが)。D-Labは決して、華々しく工学部の新規コースとしてデビューしたわけでもなく、学長の戦略的教育プログラム拡張によって導入されたわけでもなく、大学の工作室の隅で、物好きな人がひっそり始めた、ひっそりしたコースだったのです。
そのD-Labは今や、MITのAdmissionのページでも宣伝されるほど、大学にとっての自慢コースの一つになっています。シンポジウムのプレゼンにもあったとおり、12クラスの授業は毎回すべて定員オーバーで生徒の選抜に苦慮するほどです。
どうしてそこまで広まったのか。様々な要因がありますが、本質的にはAmy Smithから始まったD-Labがその後、多数のインストラクター・パートナー団体をはじめ、新たな仲間を巻き込み、常に「オモシロイモノ」を生み出し続けてきたからではないかと思います。Joseが率いるInnovations in International Healthでは、構想段階のものまで含めれば、100以上の医療機器関連の開発が進んでいます。遠藤さんの教えている義足の授業には、MITで最先端の義足を開発するBiomechatronics Groupの知見が生かされています。D-Labからスピンアウトしたベンチャーの一つであるGlobal Cycle Solutionsでは、自転車動力の開発を授業のプロジェクトでとどめるのではなく、ビジネス上、持続可能な方法でアフリカ諸国に導入するやり方が模索されています。
もうすぐYouTubeにアップしますが、Joseや遠藤さんのプレゼンは聞いているだけで、「一・理系人間」としてわくわくしてしまいます。こんな授業があったら受けてみたい、と心から思います。私が今、MITの学部にいたら、間違いなく授業を受けていたでしょう。(現にハーバードから聴講しに行っているクラスもあります。)
・生徒が受けたいと思う授業が提供されている
・受講した生徒に、確かな教育インパクトが出ている(受講した生徒の「目の色が変わった」という声は方々から聞きます)
・授業からスピンアウトした技術が世界中のパートナーから必要とされ、喜ばれている
こんなプログラムを大学がほっておくはずがありません。
始まりのハコは、実はなんでもいいのです。要は、中身をどれだけ情熱を傾けて作りこめるか、なのだと思うのです。
ほかの大学の適正技術教育プログラムを見ると、驚くほどにどの大学でも、一人か二人の情熱あふれる人(+その熱烈な仲間)がプログラムを支えていることがわかります。
CaltechのProduct Design for the Developing WorldはKen PickarというVisiting Professorが、Engineers for a sustainable worldという学生中心の団体(2002年にコーネル大学の大学院生だったRegina Clewlowが始めた団体です)とコラボして始めた授業です。
UC BerkeleyのDesign for Sustainable CommunityはAshok GadgilというLawrence Berkeley National Laboratoryという国立研究所のシニア研究員が2006年に始めたものです。
ミシガン大学機械工学部で始まったGlobal Health Design Specializationというマイナー専攻は、Kathleeen SienkoというAssistant Professorが中心になって立ち上げたものです。(彼女はMITでドクターをしていた頃にD-Labについて知ったようです。)
UC DavisのProgram for International Energy Technologiesというプログラムは、MITのD-Labの発展にもかかわっていたKurt Kornbluthが中心になって設立しています。
書いていくとキリがありませんが、言いたかったのは、今は華やかに見えるアメリカの適正技術教育のプログラムも、最初は、大学の隅っこで、みんなからCrazyだと思われていたかもしれない、(そしておそらくCrazyだった)情熱あふれる誰かの一歩から始まった、ということです。
始めるのに立場は関係ありません。学生だからといって萎縮することも落ち込む必要もありません。
誰にでも、最初の一歩は切り開けるのです。
日本でも、一緒に、「オモシロイコト」、始めませんか。
皆様のおかげでとても実り多い会となりました。終了後の懇親会で、他分野の方々が熱心に意見交換されていたのが大変印象的でした。
さて、シンポジウムを終えて、一つだけ言い足りなかったと後悔していることがあります。
「適正技術教育の輪を日本にも」という掛け声の下、皆さん一人一人へ行動をとるよう呼びかけましたが、果たして「私にもできる気がする」と思えるだけの自信のかけらを与えられたかどうか、と。
第1部の質疑応答で、東京工業大学の学生さんが素晴らしい質問をしてくださいました。
「東工大では、ICT ChannelというサークルでD-Labと同じような活動をしている。しかしながら、学生団体なので十分なリソースのサポートもないし、卒論にすることもできないので学生の時間も割きづらい。D-Labはどのように始まったのか。またどこから資金をもらっているのか。」というものでした。
質疑応答中は時間の都合上、十分にお答えをすることができませんでしたが、「D-Labの活動は良くわかった。では、私たちはどうすればいいのか」という心の叫びが聞こえるようで、シンポジウム終了後も、ボストンへの飛行機の中も、ずっとその質問がつきまとって頭を離れませんでした。
今日はこの場を借りて、私なりの回答を書いてみようと思います。
D-Labは以前のエントリーにもあるとおり、2003年にEdgerton CenterでInstructorをしていたAmy Smithが始めました。初めてコースが開講された頃、私はMITに学部生として在籍していましたが、卒業する2006年まで、D-Labについてはほとんど知りませんでした。 Amy Smithについては、Genius Grantを受賞した2004年に、学内新聞で名前を見かけていましたが、その時の印象も、「へえ、大学内には不思議なことをしている人もいるんだ。」という程度の認識でした。
Edgerton Centerは日本で言えば工学部に併設された工作室、東工大でいえば、「ものつくりセンター」のようなセンターです。そのセンターのインストラクターといえば、いわば「工作室のおっちゃん」(いえ、Amyはおっちゃんではなかったわけですが)。D-Labは決して、華々しく工学部の新規コースとしてデビューしたわけでもなく、学長の戦略的教育プログラム拡張によって導入されたわけでもなく、大学の工作室の隅で、物好きな人がひっそり始めた、ひっそりしたコースだったのです。
そのD-Labは今や、MITのAdmissionのページでも宣伝されるほど、大学にとっての自慢コースの一つになっています。シンポジウムのプレゼンにもあったとおり、12クラスの授業は毎回すべて定員オーバーで生徒の選抜に苦慮するほどです。
どうしてそこまで広まったのか。様々な要因がありますが、本質的にはAmy Smithから始まったD-Labがその後、多数のインストラクター・パートナー団体をはじめ、新たな仲間を巻き込み、常に「オモシロイモノ」を生み出し続けてきたからではないかと思います。Joseが率いるInnovations in International Healthでは、構想段階のものまで含めれば、100以上の医療機器関連の開発が進んでいます。遠藤さんの教えている義足の授業には、MITで最先端の義足を開発するBiomechatronics Groupの知見が生かされています。D-Labからスピンアウトしたベンチャーの一つであるGlobal Cycle Solutionsでは、自転車動力の開発を授業のプロジェクトでとどめるのではなく、ビジネス上、持続可能な方法でアフリカ諸国に導入するやり方が模索されています。
もうすぐYouTubeにアップしますが、Joseや遠藤さんのプレゼンは聞いているだけで、「一・理系人間」としてわくわくしてしまいます。こんな授業があったら受けてみたい、と心から思います。私が今、MITの学部にいたら、間違いなく授業を受けていたでしょう。(現にハーバードから聴講しに行っているクラスもあります。)
・生徒が受けたいと思う授業が提供されている
・受講した生徒に、確かな教育インパクトが出ている(受講した生徒の「目の色が変わった」という声は方々から聞きます)
・授業からスピンアウトした技術が世界中のパートナーから必要とされ、喜ばれている
こんなプログラムを大学がほっておくはずがありません。
始まりのハコは、実はなんでもいいのです。要は、中身をどれだけ情熱を傾けて作りこめるか、なのだと思うのです。
ほかの大学の適正技術教育プログラムを見ると、驚くほどにどの大学でも、一人か二人の情熱あふれる人(+その熱烈な仲間)がプログラムを支えていることがわかります。
CaltechのProduct Design for the Developing WorldはKen PickarというVisiting Professorが、Engineers for a sustainable worldという学生中心の団体(2002年にコーネル大学の大学院生だったRegina Clewlowが始めた団体です)とコラボして始めた授業です。
UC BerkeleyのDesign for Sustainable CommunityはAshok GadgilというLawrence Berkeley National Laboratoryという国立研究所のシニア研究員が2006年に始めたものです。
ミシガン大学機械工学部で始まったGlobal Health Design Specializationというマイナー専攻は、Kathleeen SienkoというAssistant Professorが中心になって立ち上げたものです。(彼女はMITでドクターをしていた頃にD-Labについて知ったようです。)
UC DavisのProgram for International Energy Technologiesというプログラムは、MITのD-Labの発展にもかかわっていたKurt Kornbluthが中心になって設立しています。
書いていくとキリがありませんが、言いたかったのは、今は華やかに見えるアメリカの適正技術教育のプログラムも、最初は、大学の隅っこで、みんなからCrazyだと思われていたかもしれない、(そしておそらくCrazyだった)情熱あふれる誰かの一歩から始まった、ということです。
始めるのに立場は関係ありません。学生だからといって萎縮することも落ち込む必要もありません。
誰にでも、最初の一歩は切り開けるのです。
日本でも、一緒に、「オモシロイコト」、始めませんか。
Friday, March 19, 2010
「大学」×「技術」×「BOP」シンポジウム いよいよ本日
いよいよ、シンポジウム当日となりました!若干名、当日受け付けることが出来る可能性がございますので、もしご希望の方は直接会場受付までお越しください。皆様とお会いできるのを、実行委員一同、楽しみにしております!
Wednesday, March 17, 2010
「大学」×「技術」×「BOP」シンポジウム 定員到達、レセプション申し込み開始のお知らせ
3月20日の「大学」×「技術」×「BOP」シンポジウム、非常に直前の告知にも関わらず多くの皆様に申し込み頂き、ありがとうございます。
現在、定員を上回る参加申し込みを頂きましたことから、キャンセル待ちフォームに切り替えております。最終的な参加可否については、シンポジウム前日までに全ての方にご連絡差し上げますので、ご登録ください。ホール定員との兼ね合いを見ながら、繰り上げるかどうか調整させていただきます。なお、参加申し込みが確定されている方には、メールにて本日ご連絡差し上げました。1人でも多くの方を会場にご案内するため、お手数ですが御都合が悪くなりました場合にはご連絡頂ければ幸いです。
なお、レセプションの受付を開始いたしました。シンポジウム終了後、お隣の部屋でサンドイッチとお飲み物による非常に簡単なものをご用意いたします。(費用は2000円となります)こちらは先着150名、発注の関係で18日(木)午後6時を期限とさせて頂きますので、ご参加を希望されます場合はお早めにご登録ください。
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